ゆるい職場 ~若者の不安の知られざる理由 ~ 古谷星斗 著

ゆるい職場 ~若者の不安の知られざる理由 ~ 古谷星斗 著 中公新書ラクレ
4月に入り、多くの職場で新人社員を迎えていることと思う。
タイトルを見て「昭和世代による『嘆きの書』」だと思ったら大間違いだった。著者自身も2011年の新卒入社であり、その眼から見ても「職場が明らかに変容している」ことを捉えているのが本書だ。
「ゆるい職場」は、期間を経て醸成されたのではなく、登場した、とほぼ断言している点が、新鮮で衝撃だ。著者はその登場を「グレートリセット」と称する。
前半で提示されている定量的なデータには驚くものが多い。例えば、大手企業の早期離職率(新卒3年未満の離職)は、2009年の20.5%から、2017年は26.5%にまで上昇している。
若者雇用促進法の施行や、働き方改革による労働時間の制限により労働環境は改善しているのに、なぜ早期離職が増えるのか。
本書では、事実関係の確認に加え、データと定性的なインタビューを交えてその事由を明らかにしようとしている。
著者は離職の理由が「不満」ではなく、「この会社でしかメシを喰えなくなる」という「不安」に変異している点や、学生時代のインターンの経験が当たり前になり「入社前の社会的経験」が影響している点なども指摘する。
情報過多による「ありのままで」で「なにかになりたい」自分の存在認識や、職場における年長者のロールモデルの不在、喪失。インターネット、SNSの登場、失われた30年など、思考を巡らせると、複合的要素が交じりあってくる。
そして、「2つの最大の難問」として
①成長意欲が高く、社外活動を積極的に行う若者は自社へのロイヤルティ(Loyalty)が高い一方、離職率にも正の相関があること。
②成長実感において、仕事の質的負荷は重要な要素である一方、質的負荷と関係負荷(理不尽さ等)にも正の相関が存在し、時代はその切り離しを要請していること。
を挙げ、いくつかの解決策を提示している。
本書ではインタビュー対象が大手企業の新入社員である点に断り書きを入れているが、中小企業やスタートアップでも十分に一般化し得る内容であると思う。
◆ゆるい職場 ~若者の不安の知られざる理由 ~ 古谷星斗 著 中公新書ラクレ