求められるコロナ後の居場所

大学の多様性のある居場所づくりと地域コミュニティ ~ 三田評論3月号 ~ 坂倉 杏介 東京都市大学都市生活学部 准教授(現、教授)
A5判、5ページという限られた誌面での論考ながら、コロナ後の学校・職場の環境整備に対して示唆にあふれる内容である。
著者は、かつて「三田の家」という古民家を改装し、人々が職業・居住地・年齢関係なく集まる場を運営していたメンバーの一人だ。
画面越しに接してきたコロナ世代の学生に独特の「行儀の良さ」を感じ「居場所」の必要性を説く。
「心理的居場所」(定則, 2008)であれば、インターネット上のコミュニティでも居場所になる一方、「物理的居場所」との違いは何か。
「三田の家」で起きていた「誰でも参加でき、線引きが曖昧。でも即興的に何かが起こる場所」との差分の認識、そして、教室と違い「自分が絶えず『誰か』でいなければならない」」緊張感による、ある種の社会的鍛錬などを指摘する。
また、学級閉鎖になった子どもたちに「オンラインの居場所」を提供した結果見えてきたオンラインの功罪とも言えるべく事象。共在感覚が生み出すコンテクストの欠如、結果としての多様性の減少も明示している。
来たる5月8日から新型コロナウイルス感染症が5類指定感染症になる予定だ。
多くの組織で出社・登校に戻す、ハイブリッド、リモート継続といった見直しが行われ、内部では「リモート死守派」「出社こそ力の源派」「ハイブリッドが理想派」など、まさに「ポジショントーク」が繰り広げられていると想像する。
当初は学校と生徒の関係、労使関係の二項対立だったものが、リモート期間中に両立が可能となった育児や介護ケアなどのライフステージにかかわる要因も加わり、三項対立に移行している点が「ポジショントーク」を、より複雑にしているようにも見える。
自身のかかわる組織や団体が「心理的居場所」「物理的居場所」として、どのように機能しているのか。そして、勤務形態の最適解はどこにあるのか、改めて深く考えるきっかけとなった。
◆大学の多様性のある居場所づくりと地域コミュニティ
~ 三田評論3月号 ~ 坂倉 杏介 東京都市大学都市生活学部 准教授(現、教授)
著者は全国の焼肉を食べ歩いているYAKINIQUESTのメンバーという一面も持つ。私とは月に一度、焼肉の網という場を共有しているが、彼にとって、網は「心理的居場所」なのか、「物理的居場所」なのか、いつか真面目に聞いてみたいと思っている。