映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ~コンテンツ消費の現在系 稲田豊史 著

ファスト映画・ネタバレ~コンテンツ消費の現在系 稲田豊史 著 光文社新書
何でも早送りし、結論を知ろうとする若者を揶揄する本だと思ったら大間違いだった。
とにかく今の日本人は情報過多の時代に生きている。
大人たちも会議がはじまると早々に「結論は?」と問い、書店には「何分、何日で分かる」といった、いかにも即効性のありそうなタイトルが付いたものが並んでいる。選挙結果の速報も「秒で分かる」時代だ。
情報通信の量を表すインターネット・トラヒック(トラフィック)は、以前、年20%の割合で増加していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、2019年11月から2021年5月までの間、一気に約2倍まで増加している。(※)
「作品を鑑賞する」ではなく、時間をやりくりして「コンテンツを摂取」しないと周囲の話題について行けない時代。
本書では20代(Z世代)の倍速視聴経験が突出して高いこと。そして、「コスパ」から「タイパ(タイム・パフォーマンス)」への変異と、その根底にある「ハズレをつかみたくない」心理について言及している。
また、経済的な背景としての「大学新入生の月平均仕送り額から家賃を除いた生活費」が、ここ30年で劇的に減少していることは、驚きの事実だった。
そして、AO入試・入社試験におけるガクチカ(学生時代に力を入れたことを主張すること)の隆盛によって「個性を際立たせることがマスト化した」Z世代特有の悩みにまでも触れている。
この時代をどう生き、そして、これから消費の中心となるZ世代に対して、どのようなコンテンツやサービスを提供すべきなのか、大いに考えさせられる一冊だった。
映画を早送りで観る人たち
ファスト映画・ネタバレ~コンテンツ消費の現在系 稲田豊史 著 光文社新書
※総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」