バスの仕切人 A Facilitator In The Bus

家の近くには路線バスが三路線走っており、便利に使っている。そのバスなのだが、電車より車内が狭いが故に、時折バス特有の問題が発生する。

通路の途中で立ち止まり、後ろに詰めない人。奥に詰めるよう運転手さんがアナウンスしても一向に動こうとしない。自分のポジショニングが大事なのか、人の指示を聞きたくないのか、動機は分からないがとにかく動かない。結果、乗りたくても乗れない人が発生する。

二人掛けの席で通路側に座る人、もしくは通路側の席に荷物を置いてガードしている人。自分の席の隣は広いほうがいいに決まっているが、自分の隣よりも他を先に探してね、とメッセージを発している。さらに進行すると座れない人がいても気にしないで、そのままのケースすらある。

ストレスフルな瞬間である。

しかし、ある日、その人はいた。

いつも通りにバスに乗ると、最後部の座席中央に座っている乗客の女性から、おもむろに指示が出た。

あそこに座れ、と。

そして、その女性はバス停に止まる度に車内状況を確認しながら、乗客に対し、座る位置を的確に指示していた。当然、二人掛けの席に荷物をおくような輩も誰一人としていない。

最初はその高圧的にも取れる指示に動揺したが、しばらく乗っていると、その規律を保たれたバス空間が心地よくなっていることに気が付いた。

あのとき以来、路線バスや新幹線自由席での混乱を見る度に「ああ、あの人がいてくれたら」と思うのである。