戦後70年の正月に聞いた話

戦後70年、戦中戦後の話を聞くことも少なくなったが、正月にその機会があった。

「海で遭難した人を助けるときは注意しないといけない。手をつかんだ瞬間に死を迎えることがあるからだ。」

その港は日本海側にあった。戦後まもなく、気象情報や航海術が発展していない中、沖合で船が難破することが、よくあったという。

船の異常を知らせる汽笛が鳴ると、村人は救助のために浜に向かう。やっとのことで岸まで辿り着いた船員を助ける時、手をつかんだ瞬間に死を迎えることがある。だから、救助には細心の注意しなければいけないというのだ。

救助された船員を家に迎え、宿として提供した際、その中に船長がいたことは一度もなかったそうだ。船長は船と一緒に沈まねばならない時代だったからだ。

やがて難破した船の積荷が浜に上がってくる。食糧難の時代、大量の鰊やみかんなどを集めにいくのは子供の仕事だったそうだ。さらに、集めたものを盗もうとする輩を見張るのも子供の仕事。

その海には戦争が終わっても海に機雷が浮いており、興味本位で触ってしまった子供が亡くなってしまったこともあったそうだ。

海難、食糧難、そして機雷。今の時代からは想像もつかないが、平和を幸福に思わねばならないと改めて思った。

グッピーとピーター2

その昔は雑誌宝島のVOW(バウ)というコーナーで扱われていたようなハナシではあるが、散歩をしていると、珍名・奇名に出会うことがある。たいていの場合はアパートやマンション名であるのだが、気になって仕方ないのがこの二つのコインラインドリーだ。オーナーは一体、どの瞬間にこの名前を思いつき、命名したのか。興味は尽きない。それにしてもピーター2の左の空き家にはピーター1があったのであろうか・・・

guppy

 

peter

趣味の店

shumi
街歩きをしているとたまに見かけるのが「趣味の店、○○」という店だ。趣味の店というのは、たいてい店主が好きなスポーツやカルチャー、あるいは特定の地域の洋服や雑貨を扱っている場合が多い。いずれの場合も一家言ありそうな店主が店の奥に鎮座していそうで非常に敷居が高く、また、店全体の雰囲気もどこか俗世から離れ、世の中を上から見下ろしたようなオーラを纏っているように感じる。
この神戸の南京町でみつけた店は、その名も「喫茶しゅみ」。喫茶店である。看板を良く見ると、漢字で「須彌」と書いてある。調べてみると「須彌」とは須弥山(しゅみせん)という山の略で、須弥山とは古代インドの世界観で中心にあるとされている山のようだ。
その須弥山の土台となっている部分を金輪際(こんりんざい)と呼び、翻って、物事の最初から最後という意味になったそうなのである。
この「喫茶しゅみ」のオーナーはどのような想いでこの店名を付けたのであろうか。趣味との掛詞なのか、港町の喫茶店という場に金輪際の出会いの意味を込めたのか、はたまた純粋に辿り着くことのない遠くのインドの山に想いを馳せたのか。謎は深まるばかりである。

ミタケオアシン – オンとオフの共存

mitakeoasin

以前は飲食店と店舗オーナーの自宅が一緒になっている形態を割りと多く見かけたと思うが、商店街の衰退、店舗のチェーン店化などによって、都市部ではそれをあまり見なくなった。そんな中、ここ「ミタケオアン」はそれが残っている飲食店だ。写真の通り、外見はごく一般の家屋であるが、客は厨房である台所の前を通過して、正真正銘のリビング・ダイニングスペースに行くことになる。以前も近くの商店街の通りにひっそりとあったが、移転してそのひっそり感に更に磨きがかかった。記号的意味を感じる店名もクールでミステリアス。日・水・祝が休みで営業時間も12時~17時と非常に短いけれど、オーナーの作るタイカレーはとても美味しい。散歩が楽しくなる。

2018年4月14日追記:東京都目黒区中目黒5-24-20に移転しています。営業時間もお店の公式Facebookページなどで確認ください。

食事処たかはし – 食べログに載っていない店

食べログに載っていない店に行くのは楽しい。それも評価者がいないということではなく、そもそも店舗情報すら載っていない店に行くわけだ。事前情報を何も得る手段が何もない中、探検するのはなかなか勇気がいるが、それだからこそ冒険心がくすぐられるのだ。そう、少年のときに行ったことのない隣町を探検したように。ここに紹介するのは「食事処たかはし」。目黒通りのホテルクラスカの裏手、建物としては目黒自動車の一区画にある。営業時間はお昼と夕方の僅かな時間。地元でも気づいている人は少ないかもしれない。昭和の大衆食堂といった風合いの店内はおじちゃんとおばちゃんが切り盛りしており、AMラジオが流れている。

People Get Ready – Jeff Beck x Rod Stewart

Jeff Beckの語りかけてくるギター、Rod Stewartの泣けてくる声、オリジナルは他のアーティストだけど、自分はこのバージョンが好き。
People get ready there’s a train a-coming
You don’t need no baggage, you just get on board
All you need is faith to hear the diesels humming
Don’t need no ticket, you just thank the Lord
人々がやってくる電車に乗る準備をしている
あなたは何も持たずにただ乗ればいい
ディーゼルの音を聞くためにあなたに必要なものは、信じること
切符なんて必要ありません。ただ、神に感謝しなさい
People get ready for the train to Jordan, picking up passengers from coast to coast
Faith is the key open the doors and board them, there’s room for all among the loved the most
人々がヨルダン行きの電車に乗る準備をしている乗客を岸から岸へと運んでいく
信じることが電車のドアを開けて乗る鍵となり、そこには愛すべき人々への部屋が用意されている
There ain’t no room for the hopeless sinner who would hurt all mankind just to save his own
Have pity on those whose chances are thinner, cause there’s no hiding place from the Kingdom’s Throne
人を傷つけ自分守ることしかできないような望みのない罪人には部屋は用意されていない
でも、チャンスに恵まれない人には憐れみを持つ。それは国の権力から隠れる場所がないからだ
So people get ready for the train a-comin’
You don’t need no baggage, you just get on board
All you need is faith to hear the diesels humming
Don’t need no ticket, you just thank, you just thank the Lord
だから人々はやってくる電車に乗る準備をしている
あなたは何も持たずにただ乗ればいい
ディーゼルの音を聞くためにあなたに必要なものは、信じること
切符なんて必要ありません。ただ、ただ、神に感謝しなさい。
I’m getting ready I’m getting ready
this time I’m ready this time I’m ready
自分は準備している 自分は準備している
今度は自分も乗れる 今度は自分も乗れる
——-
「電車とはチャンスのこと。それは誰にでもやってくるものなのだがら、難しいことなど考えずに、ただただきれいな心で前に進みなさい」というのがメッセージのように思える。
当時、既に十分な名声を得ていたはずのJeff BeckとRod Stewartがこの曲を選んだということは、まだ彼らにも成し得ていないことが、あったというころかも知れない。
そして、果たして、ここに出てくる「ヨルダン」とは国のことなのだろうか。それとも何かを暗喩しているのだろうか。

Walking In Memphis – Marc Cohn

秋口が似合うピアノの名曲。もちろんメンフィスには行ったことがないけれど、なぜか情景が浮かぶから不思議。

Put on my blue suede shoes

And I boarded the plane

Touched down in the land of the Delta Blues

In the middle of the pouring rain
W.C. Handy — won’t you look down over me
Yeah I got a first class ticket
But I’m as blue as a boy can be

青いスエードの靴を履いて飛行に乗った。
土砂降りの雨の中、デルタブルースの土地に着陸した。

W.C.ハンディ(ブルースの父)・・・あなたは私を見下すだろうか
ファーストクラスのチケットを持っている私を
でも、少年のように浮かない気分だ。

 

* Then I’m walking in Memphis
Walking with my feet ten feet off of Beale
Walking in Memphis
But do I really feel the way I feel

そして自分は今メンフィスを歩いている
ビール通りから10フィートのところを自分の足で歩いている
メンフィスを歩いている。だけど自分の思う通りに行っているのだろうか。

 

Saw the ghost of Elvis
On Union Avenue
Followed him up to the gates of Graceland
Then I watched him walk right through
Now security they did not see him
They just hovered ‘round his tomb
But there’s a pretty little thing
Waiting for the King
Down in the Jungle Room

ユニオン通りでエルビスの亡霊を見た。
グレースランドの入り口まで彼を追いかけ
彼が通り抜けていくのを見た。
守衛の連中は彼を見ずにただ墓の周りをうろうろしていた。
だけどそこにはジャングルルームのスタジオで落ち込んでいるキングを待っているかわいい子がいた

 

(Chorus *)

 

They’ve got catfish on the table
They’ve got gospel in the air
And Reverend Green be glad to see you
When you haven’t got a prayer
But boy you’ve got a prayer in Memphis

その地ではテーブルにナマズが置いてあり、ゴスペルが流れている。
グリーン牧師、祈りをささげる前のあなたに会えて光栄です。
でも、メンフィスではもう祈りを捧げていたのですね。

Now Muriel plays piano
Every Friday at the Hollywood
And they brought me down to see her
And they asked me if I would —
Do a little number
And I sang with all my might
And she said —
“Tell me are you a Christian child?”
And I said “Ma’am I am tonight”

今ではミュリエルが毎週ハリウッドでピアノを弾いている。
彼らは自分を彼女の元に連れていき、何曲か歌うかどうか聞いてくるのだった。
そして、自分は夜通し歌い、彼女は言うのだった。
「あなたはクリスチャンの子供なの?」
そして自分は「お嬢さん、今夜は」と答えるのだった。

 

(Chorus *)

 

Put on my blue suede shoes
And I boarded the plane
Touched down in the land of the Delta Blues
In the middle of the pouring rain
Touched down in the land of the Delta Blues
In the middle of the pouring rain

青いスエードの靴を履いて飛行に乗った。
土砂降りの雨の中、デルタブルースの土地に着陸した。
土砂降りの雨の中、デルタブルースの土地に着陸した。

オールデン

 

代の頃からポパイなどのファッション誌でその名前は聞いたことがあったし、靴のメーカーであることも知っていた。

長らく気にはなっていても、中々手に入れることはなかったのだが、ふとしたきっかけで手に入れることになった。靴好きの友人に相談したところ、自身のコレクションからサイズが合うものを譲ってくれたのだ。写真のオールデン、サドルオックスフォード。

まず履く時のゴムのような革の伸びに驚き、履いたときのフィット感に再度驚いた。とにかく歩きやすい。そしてそれが最も分かったのは3月11日の震災の日だった。震災の日はこのオールデンを履いていた。エレベータが使えず17階から1階まで非常階段で一時避難、再び17階まで戻り、夜になってまた1階まで降り、家まで7キロの道のり歩いたのだが、全く苦にならなかった。

最初は見た目に違和感を覚えたカカト部分が外側に向けて傾斜している作りも秘伝の一つと知って納得。一足買うと底なし沼と言われているそうだが、その意味が分かってしまった気がする。

ドリンクスタイリスト「ノミモノヤ」

もちろん “ドリンクスタイリスト” なんて職業は知らなかった。
キャットストリートのカフェAnnon cook「ノミモノヤ」の小川純一氏が期間限定のメニューを提供するというので興味津々に行ってきた。
写真はスターアニスやピンクペッパーが入ったレモネード。見た目の美しさもさることながら、数種類のスパイスが複雑にレイヤードされた味わいはとても美味だった。